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1冊の本ができるまで
今回はブックライターの仕事の流れについてご紹介します。クライアントや書籍の分野によって多少の違いはありますが、たいてい以下のような流れとなっています。
◆ブックライターの仕事の流れの一例
▼受注
▼取材準備(資料収集・資料読み込み・質問リスト作成など)
▼取材
▼原稿作成
▼修正・校正
▼発売!
以下、それぞれのステップを具体的に見ていきます。
受注~取材|じつは一番時間がかかっているかも……!?
◆受注・打ち合わせ
まず、出版社あるいは編集プロダクションから仕事の打診をいただきます。初回の連絡で提示されるのは
・著者
・企画のテーマ
・ページ数
・撮影の有無
・スケジュール
・予算
といったところでしょうか。スケジュールや条件が合致すればお引き受けして、詳細を詰めていきます。対面で打ち合わせする場合もあります。
私はあまり経験がありませんが、ブックライターが企画を出すのももちろんありです。
◆取材準備
続いては、取材のための準備にとりかかります。取材する著者がすでに本を出版していれば、まずはその本を読みます。著書が大量にある場合は、スケジュールによってはすべて読むのが難しいことも。そんなときは最新刊と企画のテーマに近いものを重点的に読みます。雑誌やインターネットにインタビュー記事などがあれば、そちらももちろんチェックします。
同時に、著者以外の本も、参考文献としてなん冊か読んでおきます。著者の専門分野についての知識を掘り下げるため、加えて、類書の動向を知るためです。
*類書とは*
内容が似ている書籍のこと
取材前には質問リストを作成します。私が経験した限りでは、ブックライターが質問リストを作成し、編集プロダクションや出版社の担当編集者がチェック。適宜、修正や質問の追加などをしてから、取材数日前に著者に渡すケースがほとんどです。
エクササイズやレシピなど撮影が必要な書籍の場合は、撮影ラフを作成することもあります。
*撮影ラフとは*
ラフ(rough)=英語で「おおまか」という意味。なにを・どんな風に撮影するのかをまとめた資料です。手書きで作成することも、写真を合成して作成することもあります。撮ラフともいいます。
たとえば、筋トレ本でスクワットのやり方を紹介するページがあるとします。この場合、
1)足を肩幅に開いて立ち、手は後頭部に添える
2)腰を落とす
の2枚の写真を撮影することがわかるよう、撮影ラフを作成します。
撮影した写真が右ページに配置されるのか、左ページに配置されるのかで、モデルさんの体の向きが違ったりもするので、そのあたりもわかるようにしておかなくはなりません。足の向きにポイントがあるのなら、足の向きがわかるよう足だけを撮るなど、細かいカットもわかるようにしておきます。
撮影ラフの作成は、正直、非常に手間がかかります。イラストをさらさらっと書ければいいのですが、あいにく得意ではなく、エクササイズ系の本であれば棒人間を書いてなんとか乗り切っています。
撮影ラフは、撮影日の数日前までに編集者、カメラマンさんと共有しておき、当日はこの撮影ラフを見ながら撮影を進めます。撮影を効率よく進め、なおかつ撮影モレを防ぐためにも、撮影ラフの作成はとても重要です。
なお、ビジネス書や新書など、文字が主体の書籍では撮影ラフは必要ありません。また、ライターではなく編集者が作成するケースもあると思います。
◆取材当日
いよいよ取材当日です。編集者は事前に著者と会っていますが、たいていの場合、ブックライターはここではじめて著者と対面することになります。そこで、名刺交換と簡単なあいさつをすませてから取材をはじめます。取材内容をICレコーダー等で録音するのであれば、著者の承諾を得てから録音を開始します。
取材は、基本的には質問リストに沿って進めます。ただし、話の流れによって質問をスキップしたり、追加したりと、臨機応変な対応も求められます。
文字が主体の書籍では、取材は1回2~3時間ほど。これを2~3回行います。エクササイズ本のように撮影がある場合は、2~3日連続で行うケースがほとんどでした。撮影中はモデルさんにポーズの指示をして、編集者やカメラマンと写真がOKかどうかを随時確認。その合間に著者にエクササイズのポイントを聞ききます。なん度経験しても、撮影が終わるころにはぐったりしてしまいます。
取材後~完成まで|ようやく執筆! 10万字書くと腕が死にます
◆取材後
取材を終えたら、テープ起こしの原稿を読んで内容を整理します。そして、過去の著書、類書も参考にしながら、構成案を考えます。編集者が作成した構成案がすでにあるのなら、取材を受けて変更が必要な箇所がないか確認をし、必要に応じて手を入れます。
*テープ起こしとは*
録音された音声の内容を文字化すること。「テープ起こし」と呼ばれるのは、録音媒体がテープレコーダーだったころの名残です。「文字起こし」とも呼ばれます。
原稿を書く前に台割をつくることもあります。
*台割とは*
書籍の「設計図」です。書籍のどのページにどういった内容が入るのかを割り振り、表にまとめます。
◆原稿を書く
ようやく本業ともいえる原稿作成にとりかかります。ここにたどり着くまでがなかなか長いのです。
原稿の書き方は千差万別で、どのライターさんも自分なりのスタイルがあると思います。私の場合は、最初から最後まで通しで一度書き上げてしまうのが常です。この段階の原稿はかなり粗く、どの話をどういう順番で書くのかがわかる程度。誤字脱字や表記の統一、主語述語のねじれのオンパレードで、他人様にお見せできるレベルではありません。
ひと通り書き終えたら、話の展開に無理がないか、内容が重複していないかなどを確認。その後、原稿を整えていきます。この期間はひたすらタイピングしているので、肩こり・首こり・腰痛との戦いでもあります。原稿が5万字を超えると腕や指にも痛みが……(体が資本って本当です)。
とはいえ、いつも上記の流れでできるわけではありません。スケジュールの関係で、10ページなり20ページなり、ある程度できあがったら順に納品することもあります。このような場合は、納品ずみの原稿と内容が重複していないか、あるいは矛盾していないか気をつけながら書き進めます。
エクササイズやレシピの書籍では、書いた原稿がデザインフォーマットのどの部分に該当するのかがわかるよう、指示書を添えて納品することもあります。
*デザインフォーマットとは*
書籍は本文のほか、見出し、写真、イラストなどさまざまな要素で構成されています。それぞれの大小、位置、点数などの基本ルールをあらかじめ決めたものがデザインフォーマットです。デザインフォーマットはデザイナーが作成し、ライターはフォーマットの文字数に合わせて原稿を作成します。
◆修正・校正など
原稿を納品したあとの対応はクライアントによって異なります。修正対応やゲラチェックを求められることもあれば、納品したら終わりというケースもあります。納品後にどこまで関わるかによって実働期間も労力もずいぶんと変わるので、依頼を受けた際にクライアントにできる限り聞くようにしています。
個人的には、本ができあがり、見本誌を受け取ってようやく、「ひと仕事終えた」気持ちになれます。発売されるまでは、修正対応が発生する可能性があるためなんとなく落ち着きません。
打診から発売まで1年以上になることも。当然入金も……
制作期間は、スケジュールやボリュームによって大きく変わります。発注から実際に書籍が発売されるまで半年、ときに1年以上かかることも。
そのうち、実際に原稿を書いているのは、1日7時間をその案件のみに費やすとしたら、3~4週間ほどでしょうか。ライターといいつつ、書いている時間よりも、その準備や原稿執筆後のあれこれにかかる時間のほうが案外長かったりするのです。
なお、今回ご紹介した仕事の流れはほんの一例です。書籍のジャンルやクライアント、ライターの経歴などによっていろいろ違いもあると思います。新しいクライアントさんとお仕事するのはいつも緊張しますが、「こういう仕事の進め方をするのか」と発見があり、いい勉強になります。
NOTE
原稿料は書籍の発売後に振り込まれるのが一般的です。ただし、発売月に振り込まれるとは限りません。入金は発売月の翌月末や翌々月末だったりします。原稿納品してから半年経ち、ようやく原稿料が振り込まれるなんてことも珍しくありません。このように書籍の仕事はスパンが長いので、キャッシュフローがなかなか大変です。

